華麗なる海外逃亡記

1年半、41ヶ国にも及ぶ(現在進行形)、自分のバックパッカーとしての記録を記した雑記です。

第7話 狂人 ~過酷な宿探し~

 3日目の朝を迎えた私は、早速観光とともに、重要な任務を遂行するために、オールドドバイに向かった。オールドドバイには、アラビアンな雰囲気の建物や、スークと呼ばれる中東の市場がある。ここで、私の重要な任務についてだが、これは極めてクレイジーなアイデアであり、私自身今考えても絶対にやりたくない、そういった類の愚行であった。旅に出る前に、ドバイの人は全く知らない人物がいきなり訪ねてきたとしても、3日間は何も言わずにもてなしてくれるという動画を見てしまっており、これに惑わされた私は、ホテルを2泊3日分しか取らずに旅に出ていたのだ。そして、オールドドバイのように、伝統的な暮らしをしている場所に行けば、何かしら泊めてくれる人がいるのではないかという甘い考えを当時の私は持っていた。そして、電車に乗り、オールドドバイに近づいてくると、とある地区を見つけた。そこには伝統的に見える建物が多くあり、私はその地区には伝統的生活を送る人達が多くいると思い、その近くの駅で慌てて下車し、宿を探索することにした。駅からでた私は、まさかの事態に直面した。思いの外、住宅と呼べるような場所が少ないのである。そして、住宅を見つけたとしても、超がつくほどの豪邸ばかりであり、とても宿泊交渉にいけるような家は無かったのである。とはいえ、灼熱の真夏のドバイにて野宿を断行するには、バックパッカーとしての経験が足りなかった私は(今なら余裕で出来るが)、勇気を出して大豪邸にて交渉をすることにした。しかし、多くの家のインターフォンを押すも、そもそも不在の場所が多かった。不在出なかった場所でも、ただひたすら断られ続けた。そこで私は、薄々動画の内容が極めて誇張を含んだものであったことに気づいてきた(アホ)。しかし私は諦めず、乞食魂を燃やし続け、根気強く宿探しを続けた。そしてとある豪邸にて、最悪の事実を知ることになった。その豪邸でインターフォンを押すと、若い女性が出てきた。彼女は私に用を尋ねたので、私は宿を探している旨を伝えると、家の奥に入っていった。ここで私の期待値は最高潮に達した。そして数分後に、奥からご夫人が出てきた。彼女にも宿を探している旨を伝えると、残酷ながらも断られ、私の期待はカバンの中で放置したポテチのごとく粉々になった。しかし、彼女は有力な情報を私に与えた。彼女曰く、その地域は金持ちの外国人用の別荘地であり、その時期には多くの家主がそこには居ないとのことだった。

 

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伝統的建物が多いように見せかけた地区の入口


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ピンポン交渉しまくった豪邸の1つ(盗撮失礼)

 

 私はすぐさまその場を去り、歩いてオールドドバイまで向かったのだが、ここで事件が起こる。徒歩で1時間かかる距離なのだが、当時の私は節約の必要性から、乞食魂が最高潮まで達しており、電車やタクシーを使わずに、45度の灼熱の中、歩いてオールドドバイまで行くことにした。私には勝算があった。ドバイのバス停はドア付きで冷房が効いているものも多く、そこで効果的に休憩を取りながら行けば、無事オールドドバイまでたどり着ける算段だったのだ。また、キツくなればカフェやレストランで休めばいいと高を括っていたのだ。そこで歩き始めて30分ほどで、重い荷物も相まって、ついに疲労と暑さが限界まで達した。そこで、バス停を探すと、ちょうど目の前にバス停があった。そこで、バス停に入ったのだが、何かがおかしい。そう、そのバス停には冷房がついておらず、ただのサウナと化していたのである。すぐさま脱出し、歩き続けたのだが、残りの30分ほどをどう凌ぐかを考えると、非常に厳しかった。そこで、節約のためにレストランかカフェで休むことを考えたのだが、そんな時に限って見つからないのである。結局、本当に死にそうになりながら、オールドドバイまで歩き、到着する頃にはスッカリ熱中症になってしまったのである。急いでオールドドバイにあったビリヤニ屋に入り、ビリヤニを注文した。そこには美味しくない硬すぎる生の人参や私の大嫌いな生のきゅうり(中学生の時に河童と呼ばれてたくせにきゅうり嫌い)が添えられており、またビリヤニその物もあまり美味しくなく、特にマトン(羊肉)は獣臭さが酷く、完食したものの、熱中症による食欲不振も相まって、非常にキツかった。飲み物に関しては、何故か日本が恋しくなっていたので、とりあえずgreen teaの文字を見つけた私は、それを注文することに。しかしこれはインディアングリーンティーで、日本の静岡や京都のいわゆる緑茶とは大きく異なる風味を持っており、全くもって祖国のノスタルジーを感じることが出来なかった。

 

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期待外れのグリーンティー

 

 そんなこんなで少しだけ元気になった私は、オールドドバイで観光&宿探しをすることに。しかし、オールドドバイには家なんてものはなく、そこでの宿探しを諦め、観光に従事することにした。とりあえずオールドドバイ一体を回るために川の対岸にあるスークを目ざした。そこで、川を渡るためのボートを探したのだが、情報不足&バックパッカー経験不足が露呈した結果、私は間違えて観光用の30分間のボートハイヤーサービスに乗ってしまい、気づいた時にはもう遅かった。そこで先に値段交渉で価格を決定。変な親父に乗っけられ、宿探しの時間がない中、30分間ボートの旅へ。川から見たオールドドバイは都会のドバイを忘れられる景色で溢れており、アラビアンな伝統的建築が多く見られた。そして調子に乗った私はサングラスを着けて写真撮影(伏線です)。気持ちの良い風に吹かれて30分後、事件が発生。そろそろ岸に戻るということになって、親父が代金を要求してきたのだが、これが最初に交渉した金額よりも少し高いのだ。私は抗議したものの、そこは川の上。私はタダでさえ全く泳げない(河童の川流れが常に起こるというよく分からん状態)のにも関わらず、そこには重いリュックとキャリーバッグがあり、どう考えても自力で岸に戻れる状況ではなかった。言う通りに支払うしかなく、初の1人海外旅行にして軽くぼったくられる体験をした。そう、キャッシュ不足の私にとってはこれは大ダメージで、この時にほぼ全てのキャッシュを失った。この体験から学んだ私は、以後全てを先払いして、最悪の場合はできる限り暴力で解決するというバックパッカーには必須の知識を身につけたのである。力こそパワー(黙れ)。

 

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オールドドバイの入り口


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オールドドバイのペルシャ式モスク


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川から見たオールドドバイ

 

 岸に戻った私は、とりあえずスークに行ったのだが、コロナ禍ということもあってか、本当に活気のない場所であった。ガッカリした私は、宿について考えようと、カフェを探しに、大きめのショッピングモールへ向かうため、オールドドバイをあとにすることにした。しかしここで問題が発生。あの調子に乗って着けていたサングラスをどこかに落として失くしてしまったのである(伏線回収)。来た道をもどり、置いているコインを探す乞食のように(いつも通り)、サングラスを探した。また、聞き込みもしたのだが、結局見つからず、その場をあとにした。そして、大きめのショッピングモールに電車で向かい、例の大手コーヒーチェーン店、ス○ーバッ○スに入った。そこでその日の宿について考えてみた。そこでやっと、急に話しかけてホストを見つけるのは無理があると気づいた私は、ついに最終手段に出た。そしてこの最終手段が後の私の旅を大きく(良い意味で)変えることとなった。私は渡航前から、最悪の場合はカウチサーフィンというアプリを使って、無料で泊めてくれるホストを探そうということを決めていた。すぐさまアプリをインストールし、年会費10ドル程度を払った私は、ドバイのホストにリクエストを手当り次第に送り付け、返答を待った。本来であれば、レビューを持っていない、作り立てのアカウントではホストを見つけるのは困難なのだが、ここで運がいい私は何時間も待った末、とあるホストから許可を得ることが出来た。エジプト出身のモハメドさんという50代の男性だった。しかし彼の住む場所はドバイではなく、UAEを構成する他の首長国の1つ、シャルジャという場所にあった。時間がもう遅かったこともあり、仕方なくすぐさまタクシーでそこに向かった私は、迷いながらもギリギリ深夜0時前に彼のマンションに辿り着いた。14階にある部屋に入った私は、荷物置き、彼にただひたすら感謝をし、彼と軽く会話を交わした。ソファーを自由に使っていいと言われたので、すぐに眠りについた。そして次の日は前日の疲れからか、一日中寝転んで怠惰な一日を過ごした。夜ご飯は初めてのアラブ料理。モハメドさんがフードデリバリーサービスで注文してくれ、奢ってくれたのだ。乞食は心から喜んだ。その料理は、米とミンチ、グリンピースに煮込んだ茄子、そしてそれにヨーグルトがかかった料理。極めて中東らしいものだった。メインディッシュにヨーグルトがかかった料理を初めて食した私は、恐る恐る食べてみたのだが、これが非常に美味しかった。

 

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14階の豪華な部屋から見たシャルジャの夜景


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昼バージョン

 

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人生初のアラブ料理

 

 次の日、モハメドさんは忙しいことから、私をホスト出来ないということになり、私は新たな宿を探すこととなったので、1度ドバイに戻ることにした。2度目の宿探し難民となった私を待ち受けていたものとは......

 

次回、圧倒的ピンチ

                                                      to be continued......