華麗なる海外逃亡記

1年半、41ヶ国にも及ぶ(現在進行形)、自分のバックパッカーとしての記録を記した雑記です。

第9話 平和 ~ドバイのホスピタリティ~

 ホステルでの支払いを終えた私は、正直少しだけ不安であった。というのも、バックパッカー経験が無かったことから、旅行で宿泊=ホテルであったので、ホステルという何人もの人との共同部屋がストレスになると感じていたのである。そのホステルの経営をしているのは、アフリカ出身の女性。「アフリカ出身」という大きすぎる括りは嫌いなのだが、どの国出身か分からない。そのホステルは高層マンションの一室にあるので、とても小さいのだが、世界各地より多くの宿泊者が居た。1つの男女混合部屋と1つの女性専用部屋、キッチン、トイレ&風呂、1つの大部屋件ロビー、そしてバルコニーという造りのこのホステル。私は1つとんでもないミスを犯した。(本当に)知らずに女性専用部屋を予約してしまっていたのだ。しかし幸いなことに、オーナーの女性が女性部屋での宿泊を許可してくださった。そして私は大部屋で様々な人々と会話をすることになった。まずはバルコニーにてイギリス人の陽気なオヤジ(名前不詳)とロシア人の元警官(アレックス)、インド人の起業家ノマド(アース)、パレスチナ人の謎の男(名前不詳)の4人と会話を交わした。アレックスは腕相撲が強すぎて、ホステルのみんなが挑むも、全員敗北した。私はというと、戦わないというウルトラCを使用し、唯一ホステルで黒星を避けた英雄なのである(ザコ)。キングダムでいうところの王翦的立ち回りは人生で大事な戦略のひとつだ(20歳のガキは黙れ)。

 

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筆者のイメージ図

 

アースは昔のトレンディ俳優のようなバスローブを常に巻いていた。彼との会話を進めるにつれ、このホステルには日本人の女性が泊まっていることを知らされた。しばらく会話を楽しんでいると、その日本人女性は現れた。40代のその女性は、現在ドバイで働いているという。英語はそこまで堪能ではないものの、非常に楽しく過ごしているようだった。バルコニーでの会話を続けていると、ウクライナ人の若い女性も参加してきた。彼女はアーティストだそうで、私は気の強めな彼女にかなりいじられた(美人にいじられまくるのもまた良い)。そうして夜が更け、私は床に着いたのだが、ここで気づき始めていたのだ。ホステルとは、私が恐れていたような場所ではなく、非常に楽しく、簡単に国際的な関係性を深められる場所だということに。

 

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ホステルから見た景色(対岸にはドバイ・アイが)

 

 次の日は昼までホステルでダラダラと他の宿泊者と歓談を楽しんでいたのだが、夕方からはカウチサーフィンより2つの通知が。1つ目は、次の日から泊めてくれる人を見つけられたという通知(この人との物語は次回投稿予定)。もうひとつの通知は、ハングアウトのお誘いであった。この時ハングアウトした男性から、以降のバックパッカー経験を通して強く感じることとなる、ドバイ、さらには中東特有の限りないホスピタリティというものを感じ取ることとなった。彼の名前はカリド。彼は私を宿泊している場所の近くまで車で迎えに来てくれたのだが、初めて彼を見た時、私は非常に興味深く思えた。というのも、彼はいわゆる中東諸国の民族衣装のイメージ通りの服装だったのである(正式名称はトーブ)。

 

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彼の服装(拾い画)

 

私はローカルカルチャーに強く興味を持っていたため、車に乗り込むと、すぐに様々なことについての質問を彼に投げかけた。彼が私に教えてくれたことの一つの例としては、ドバイでは昼間には灼熱の気温のせいでほとんど人々は出歩かず、夜になると様々な所に出かけるため、ナイトライフのカルチャーが発達しているということ。他にも、イスラム教の影響で、基本的にはお酒は公共の場で飲めないが、外国人用の高級ホテルやバーなどではお酒が提供されていることなどを知らされた。そんなことを話しながら、まず彼は私をジュース屋に連れて行ってくれた。イチゴ狂人の私は、彼にいちごスムージーをご馳走になった。すると、ディナーの時間が近かったこともあり、彼は私を中東料理レストランに連れていってくれた。その時、私は何故かスマホを車内に忘れたせいで写真は撮ることが出来なかったが、簡単に言うならば、それは様々な種類のケバブ(シシケバブ)を薄いナンで巻くというシンプルなものだった。シンプルながらもその味は洗練されており、私が肉料理信者ということもあり、非常に私の好みのものであった。彼はまたも乞食な私に奢ってくれただけでなく、そのまま食後のジュースまで奢ってくれた。彼ほど乞食しがいがある人間は中東以外ではそうそうお目にかかれない(黙れ)。そして彼は、とあるショッピングモールに向かった。彼は宝石店に向かうと、ダイヤモンドの指輪について、商人とアラビア語で交渉していた。これほどドバイを感じた瞬間は無かった。そしてダイヤモンドの指輪を購入し、その足で別のフロアの高級チョコレートショップへ向かった。彼はその行きつけの高級チョコレートショップで当然のごとくチョコレートを購入したのだが、この時、思いがけないことが起きた。彼が私を店員さんに紹介すると、私が日本人だと聞いた店員さんが、日本が好きだということで、歓迎の印として巨大チョコレートケーキをくれたのである。思いがけずにお土産を手に入れた私は、ただひたすら感謝の言葉を述べ、その場を去った。彼はそのまま私をホステルまで送ってくれて、後日また会う約束をして彼は去った。そしてホステルに帰った私は、そのケーキを1人では食べられないことを確信していたため、皆を大部屋に呼んでケーキを分けることにした。もちろんタダで貰ったものとは言わずに、自分が買ってきた設定でだ(半分成り行きでそうなった感じもあるのだが)。強欲かつ厚かましい乞食である。ホステルの皆を呼ぶと、意外とまだまだ知らない宿泊者もいたのだが、いずれにせよ皆が私に感謝を述べ、世界中の人々と一緒にひとつのケーキを食べたのである。あれほど世界平和を感じた瞬間はない。そしてこのケーキが、後に私をフランスのパリにて助けることになるのだが、それはまだ先の話。そんなこんながありつつ、ケーキを完食した私は床についた。

 

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みんなで食べた高級チョコレートケーキ(タダ)

 

 次の日の朝、私は名残惜しくもチェックアウトをしようと大部屋に行った。すると、ここにはフィリピン人の女性、例の日本人女性、アース、そしてメキシコ人の男性がいた。そのメキシコ人男性の彼はサフォという名前であり、アーティストをしている非常に面白い人間である。というのも、彼は様々な楽器やパフォーマンスなど本当に多種多様な芸術を嗜んでいるのである。彼は前日にケーキをシェアした気に入ってくれ、私の餞別のために、ウクレレ演奏をしてくれた。また、彼は様々なものを顎や頭に乗せるというパフォーマンスを見せてくれた。

 

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サフォのパフォーマンス

 

 そして彼はパリに住んでいることを私に告げ、パリでの再会を約束し、連絡先を交換した。私は初めてのホステル体験を、皆に見送られながら、最高の形で終えることが出来たのである。新たなホストの元へ向かった私を待っていたものとは.......

 

次回、どデカい額縁

                                                      to be continued......